『Spirit Quest』が公開から10年



Word by Stinky Eagle

コリン・リード(Colin Read/ @mandibleclaw)の作品『Spirit Quest』(2016年)が公開から10周年を迎えました。
日本にもゆかりの深い彼の仕事を、過去の記事や写真、現在の彼の言葉とともに振り返ります。

出典:Colin readのYouTubeより

コリン・リードはフィリピンに生まれました。軍人だった父親の仕事のため、3歳までをフィリピンで過ごします。しかし、その頃ピナトゥボ山が噴火して大きな被害をきっかけに、アメリカ・フロリダ州へ移住。そこでスケートボードに出会い、父親が使っていたHi-8カメラでビデオを撮り始めます。高校生の頃には友達のVX1000を使ってお互いをフィルミングしたそうです。

その後ニューヨークに移り住んだ彼は、2009年からSLAPで数年間働いて映像制作に関わってきました。2011年にSLAPの企画『One in a Million』の騒動があり、クビになりましたが「後悔はしていない」と語ります。
この時、1週間にわたって撮影した多くのフッテージは本編では使用されず、それらの未使用フッテージを編集し、約45分の自身の作品『One in a Mandible』を制作しました。

続いて2013年『Tengu: God of Mischief』を公開。さらに日本を含む世界各地を行き来しながら撮影をしてきました。その中で重度の腰痛に見舞われ、一時は再起が危ぶまれるほどでしたが、2016年には7作目となるスケートムービー『Spirit Quest』(以下SQ)が完成。アメリカ(NY、LA、SF)、日本(東京、大阪)をはじめ、ロンドン、アムステルダム、パリ、ボルドー、バルセロナ、アテネ、ノリッジ(イギリス)、ブリユニ諸島(クロアチア)など、各地でプレミア上映会を行い、その後、彼自身のキャリアにも長く影響を与える作品となりました。

そんな彼は、自身のInstagramでSQについて「このビデオは、僕自身、考えもしなかった形で人生を変え、想像もしなかったキャリアへ僕を導いてくれました。それは人生で最高の時間を閉じ込めたタイムカプセルのようなものです。世界中に散らばっている、当時は出会うことすら考えたこともない友達が、今では家族のような存在になりました。」と語っています。

ジェームス・セイヤーズのキックフリップノーズマニュアル&コリンもVX1000キックフリップ | 出典:Colin readのYouTubeより

SQは、スケートビデオと自然映像を掛け合わせて独創的なビジュアルを作り出しています。コリンは、スケーターの滑りを見て「まるで生き物のようだ」と感じ取り、それと重なる自然映像を何時間も探して見つけ出し、重ね合わせました。あるいは逆に自然映像の方を見て「あのスケーターの動きに似ているな」とイメージして、それと同じ動きになるようにトリックを撮影し、2つの映像を組み合わせることもあったそうです。稀に全てが自然とハマる奇跡もあったようですが、基本的には何百時間もの自然映像を観た成果でした。

動物や昆虫の自然映像 | 出典:YouTubeより

撮影には、コリンが長年使い続けてきたVX1000を使用しました。時にはそれを2台同時に使用して追い撮りしたり、ビルの屋上から落としてみたり。さらには「The Aquatic Journey」と名付けられたパートでは、カメラをビニール袋でパッキングし、レンズのみを剥き出しにして、水中で追い撮りを行うなど、前代未聞の手法を編み出しています。映像作品としての面白さとスケートビデオとしての見応えを兼ね備えていて、10年を経た現在の目で観ても色褪せない魅力を放っています。しかし、このビデオの制作にあたり、どのブランドからも資金的なサポートを受けなかったそうです。

VX1000で水中撮影 | 写真出典:Fee Skateboard Magazineより

当時ニューヨークを訪れていた中平健児と田方彰との出会いをきっかけに、初めて日本を訪れたコリン。日本のスケートカルチャー、森田貴宏の作品に大きな影響を受け、日本でも多くの友人たちと出会いました。

中でも、SQが作られた一番のきっかけは、村岡洋樹がラストパートを飾るビデオを作りたいというコリンの強い思いからでした。もし村岡洋樹がいなかったら、SQは存在していなかったかもしれません。

村岡洋樹 | 出典:TransWorld SKATEboardingのYouTubeより

ちなみに筆者の注目ポイントは、コナー・カメラー(Connor Kammerer)のパートの途中から流れるダブっぽいレゲエサウンドです。この音楽は、ストリートをスケートしながら採取したスケート音(ポールジャム、パワースライド、着地音など)をループさせ、それらを組み合わせてビートを作るという手法が使われています。このアイデアはライダーのコナー自身によるものでした。コリンによると「良い打楽器要素があるスケートスポットを探して往復する作業は困難を極めた」そうです。

数多くの個性豊かなライダーたちを、それぞれのスタイルや個性が際立つ形でフィーチャーしているのは魅力のひとつです。

ドローンのようにVX1000に凧糸を付け撮影 | 写真出典:Fee Skateboard Magazineより

現在、SQはその一部がコリン・リード本人のYouTubeにアップされています。またTransWorld SKATEboardingのYouTubeにもその他のパートが公開されています。かなり作り込まれた作品なので、これからの新しい世代のスケーターやフィルマーにも是非観てもらいたいです。作品の10周年を記念した上映会も企画されているようです。
ぜひ日本でも観たいレジェンド作品、続報があればまたお伝えします。

Spirit Quest | 2016年 DVD発売
制作: Colin Read
出演:Chris Jones, Quim Cardona, Bobby Worrest, Marty Murawski, Jimmy Lannon, Zach Lyons, Ryan Barlow, Daniel Kim, Matt Town, Jesse Narvaez, Vincent Touzery, Carlos Young, Alex Fogt, Leo Gutman, Taylor Nawrocki, Eby Ghafarian, Rich Adler, Connor Kammerer, Laurence Keefe, 村岡洋樹, 内田競, 原功次郎, 宮原聖美, 石橋大地, 南勝己, 森田貴宏, 上野伸平, 小椋慎吾, 八木健四郎, PORI, 金子次郎, 他…

 

[ プロフィール ]
コリン・リード / @mandibleclaw
スタンス:レギュラー

作品:
Mandible Claw | 2010
Mandible Claw 2: 561 to NYC | 2011
Tengu: God of Mischief | 2013
Spirit Quest | 2016
solos | 2016
Anything | Girl Skateboards 2025
AF-1 Yuto | Nike SB 2026

参考サイト:
Free Skateboard Magazine|
Colin Read – Spirit Quest Interview | 2016
The No Comply Network |
Colin Read | 2019

写真の引用元:
Free Skateboard Magazine|Colin Read – Spirit Quest Interview | 2016
YouTube | Colin Read (@wcread)
YouTube | TransWorld SKATEboarding (@TransWorldSKATEboarding)

 

 

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